■「ドラ応援させて」私設応援団ら12球団など提訴
球場での鳴り物での応援を禁止された中日ドラゴンズの私設応援団に所属するファン105人は19日、
「違法な禁止措置によって野球ファンとして喜びを享受できなくなった」として、
12球団と日本野球機構などに禁止措置の取り消しや計約1400万円の損害賠償を求め、
名古屋地裁に提訴した。

■「鳴り物禁止は無効」
訴状などによると、私設応援団の「名古屋白龍会」と「全国竜心連合」に加盟する7団体は
2008年度シーズン中にトランペットなど鳴り物での組織的な応援の許可を
それぞれ球団や日本野球機構などに申請。
だが12球団などが組織し、申請の審査を行うプロ野球暴力団等排除対策協議会は今年3月、
いずれも不許可とした。

原告側は「(仮に暴力団関係者がいるとしても)暴力団を排除するには該当者や、
関連が説明づけられる者のみ排除すればいいはずだ」「鳴り物での応援行為の歴史は古く、
球場の風物詩として文化を形成し、個人の自由として法律上保護される」などとして、
応援禁止の無効を主張。
また、「楽しみを奪われ、まるで暴力団の印象を与えられ、精神的苦痛を与えられた」とし、
慰謝料として1人当たり11万円〜22万円を求めている。

日本野球機構は、03年12月に12球団などで組織するプロ野球暴力団等排除対策協議会を発足させ
06年から私設応援団を許可制にした。
団員1人1人を審査し、写真付きのIDカードを発行してきた。
両団体も昨年までは活動を認められていた。


■「問題ないと確信」日本野球機構
 日本野球機構は提訴を受け、東京・内幸町のコミッショナー事務局で報道陣に対応。
12球団と警察庁で構成されるプロ野球暴力団等排除対策協議会中央協議会のコメントとして
「訴状が届いていないので詳しいことは分からないが、私たちは適正に暴力団等排除活動を推進しており、
何ら問題はないと確信している」という書面を配布した。
07年6月19日の政府閣僚会議でも、犯罪対策閣僚会議幹事会の申し合わせとして暴力団排除活動を推進しており、
これに会う形でNPBも暴排対策に力を注いでいる。

■山田忠史・全国私設応援団竜心連合会長
「きょう、訴状を提出してきました。今年、白龍会に入ってきた中に過去5年以内に暴力団に関係した人が
含まれているということらしいのですが本人が言わない限り、
わからないこともあります。私たち竜心会はチケットを買って応援できますが、
白龍会の団員は買えない。団員の子供たちが可哀そうです」

■中日・西川順之助球団社長
「訴状をよく読み、弁護士とも話し合って対応を考えたい。
12球団も訴えられており、全球団で足並みをそろえるのか、
各球団でそれぞれ対応するのかも決まっていません。」


■「記者の目」球団の意見も無視する“力”動く
組織された応援団はもともと球団主導で発足したものである。
古い時代、プロ野球を盛り上げるためのファン動員が狙いだった。
そうして誕生した球団応援団は、プロ野球の隆盛の流れの中でいつしか消滅し、
私設応援団として残っている。

さて今回、中日ドラゴンズの私設応援団2団体が訴訟を起こした。
存在の是非はともかく、応援団が司直に訴えるという行動に出たのはなぜか。
実は訴状に記されているように「責めに帰すべき事由が見当たらないにもかかわらず、
事前に告知聴聞の機会も与えず、理由すら告げず、他の応援団と不合理な差別をなされた」としている。
両応援団体に対し排除説明がなされていないのだ。
これまで当該球団の中日ドラゴンズは機会あるごとに両応援団と意見交換し、
応援団も協力してきた。それだけに中日球団は間にはさまれた格好だ。
「12球団で決められたことは、その一員として守らなくてはいけない」(伊藤一正代表)
としながらも一方で中日球団にも竜心会連合への排除理由は伝えられていない。
応援団はまず当該球団が責任を持つはずだが、
今回は当該球団の意見が無視されるという「力」が動いていたようだ。
(報道部長・児玉光雄)